28日の米国株式相場は下落。利上げ継続を強調する金融当局者発言が相次いだことが響いた。中国の新型コロナウイルス感染対策と、それが世界経済に与える影響を巡る不透明感もリスク敬遠につながった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 3963.94 | -62.18 | -1.5% |
ダウ工業株30種平均 | 33849.46 | -497.57 | -1.4% |
ナスダック総合指数 | 11049.50 | -176.86 | -1.6% |
S&P500種株価指数は月間ベースでの上昇幅を縮小。セントルイス連銀のブラード総裁は、一段と積極的な利上げが必要になる可能性を金融市場が過小評価していると指摘。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、インフレ抑制のため政策当局にはやるべき仕事がまだあると述べた。ブレイナード連邦準備制度理事会(FRB)副議長は、一連のサプライショックがインフレリスク高止まりの原因になっていると指摘した。
投資家の関心は30日のパウエルFRB議長講演に向けられている。インフレとの闘いが2023年も続くことをあらためて指摘する一方で、金融当局として12月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げペースを落とすとの見通しを補強すると見込まれている。
エバコアISIのクリシュナ・グハ副会長は「来年にも早期利下げがあるとのやや行き過ぎた期待が再び浮上していることに、パウエル議長はもっと厳密な押し返しをするだろう。より強い労働市場がより長期化しているため、より高い金利がより長期間必要になると強調するとみられる」とリポートで述べた。
市場に広がる不安感はビットコインの売りを誘い、ブロックファイの破産法適用申請も不透明感に輪をかけた。米市場に上場する中国株はこの日は大きく反発。アップルは下げた。中国鄭州市にある「iPhone」工場の混乱で、今年は「iPhoneプロ」の生産が約600万台不足する可能性が高いことが明らかになった。
中国で続く混乱は制限解除への期待を複雑にしている。こうした期待は米利下げペース減速観測と相まって、最近の市場ではリスク資産に対するセンチメントを押し上げていた。中国当局は週末に起きた抗議活動の再開を抑えようと、北京を含む複数の大都市に大規模な警官隊を動員した。ゴールドマン・サックス・グループは中国の「ゼロコロナ政策」が「無秩序」な終わり方を迎える確率が高まっていると指摘した。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「中国では今後の経済活動が抑制された状態が続く」と予想。「中国経済に対する不透明感は、住民の抗議活動によって一層深まった。金融市場全般において投資家のセンチメントが悪化するのは確実だ」と述べた。米国債相場は小動き。10年債利回りはほぼ変わらず。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.72% | -1.01 | -0.3% |
米10年債利回り | 3.68% | 0.17 | 0.0% |
米2年債利回り | 4.44% | -1.04 | -0.2% |
米東部時間 | 16時36分 |
外為
外国為替市場ではドルが朝方の下げを埋めて上昇。米金融当局者から来年も利上げが必要になるとの発言が続いたことが意識された。中国での新型コロナ感染拡大と厳しい行動制限への抗議活動で、投資資金を避難させる動きが活発になり、円も買われた。
ドルは対円で一時1.2%下げ、137円50銭の8月29日以来の安値を付けた後、下げ幅を縮小した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1280.93 | 8.08 | 0.6% |
ドル/円 | ¥138.88 | -¥0.31 | -0.2% |
ユーロ/ドル | $1.0342 | -$0.53 | -0.5% |
米東部時間 | 16時36分 |
RBCキャピタル・マーケッツのチーフ為替ストラテジスト、アダム・コール氏は世界的な株安が反映するのはこの先数カ月において中国でのコロナ感染がさらに増加する可能性が高いことへの懸念だと指摘。そうなれば経済見通しと広範囲な世界経済を脅かしかねないという。市場にとって重要なのは抗議活動よりも、さらなるロックダウンによるリスクかもしれないと述べた。
「こうした環境で、円は重要な逃避先になる」とコール氏。「こうしたリスクが背景になければ、ドルは対円でもっと高いトレンドになっていただろう。しかし前日からの事態のように非常に一貫したリスク材料がある場合、ドル・円はそれにあらがえない。円は昔ながらの役割を担う」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は乱高下の末に反発。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が週末の会合でさらなる減産を検討するとの見方で、買いを集めた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前営業日比96セント(1.3%)高い1バレル=77.24ドルで終了。一時は昨年12月以来の安値に下げていた。ロンドンICEの北海ブレント1月限は44セント安い83.19ドル。
OPECプラスは12月4日の会合で次の生産水準を討議する。一方で欧州連合(EU)が協議中のロシア産原油に上限価格を設定する計画は、原油取引にほとんど影響しないとみられている。ユーラシア・グループはOPECにとっては原油市場の構造的な弱さが懸念材料となる可能性が高いと指摘、さらなる減産の条件が整いそうだとみている。
「全般的な市場の状況を見る限り、OPECプラスは次回会合で新たな減産を真剣に検討すると思われる。価格が向こう1週間で現行水準を大きく下回るようなことがあれば、なおさらその可能性は高まる」とユーラシア・グループのアナリストはリポートで指摘。「最終的な判断は会合時に原油価格が描く道筋次第であり、EU制裁による影響が市場でどの程度顕在化しているかによる」と分析した。

WTI先物価格
出所:Nymex
金
ニューヨーク金先物は反落。市場は中国で広がる抗議運動を意識した一方、米金融政策の今後を見極めようと主要な米経済統計を待っている。
金は今年に入り値動きが大きくなっており、価格はロシアのウクライナ侵攻を受けた3月にピークを付けて以降、インフレ抑制のための積極利上げを受けて約15%下げている。
イラ・コモディティーズ・インディアの戦略責任者、ハリシュ・ガリペリ氏は「ドルの強さは短期的に金価格を押し下げる圧力になっている一方、インフレ懸念は長期的に金を支援するだろう」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前営業日比13.50ドル(0.8%)安い1オンス=1755.30ドルで終えた。
原題:Stocks Hit by Fedspeak as China Woes Boost Havens: Markets Wrap(抜粋)
Treasury Yields Edge Higher as Oil Rebounds From YTD Low(抜粋)
Dollar Rallies on Fed Comments, China Protests: Inside G-10(抜粋)
Oil Rises With OPEC+ Seen Considering Cuts Amid Faltering Market(抜粋)
Oil Rises With OPEC+ Seen Considering Cuts Amid Faltering Market(抜粋)
Gold Steady as Covid Protests in China Dampen Risk Sentiment(抜粋)
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